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沖縄県石垣市の尖閣諸島魚釣島で、市と東海大学の調査チームがドローンを使った初めての上空からの調査を行い、自然環境が急速に悪化している状況が確認された。
尖閣諸島の貴重な生態系を崩壊させてはならない。上陸して環境悪化の原因を解明し、早急に対策を講じるべきだ。
魚釣島では昭和53年に政治団体が持ち込んだヤギが繁殖し、草木を食べ尽くすなどの被害が懸念されていた。ドローンが今回空中から撮影した映像で、被害の深刻さが裏付けられた。調査チームによれば、特に東側の山の斜面に草木がなく、随所で崩落しているのが確認された。海岸に漂着ゴミが堆積していることも分かった。
尖閣諸島にはセンカクモグラやセンカクツツジなど固有の動植物が生息している。だが、調査チームの山田吉彦・東海大教授によれば、生態系を維持できず「島が死につつある」という。
危機的である。にもかかわらず、平成24年に尖閣諸島が国有化されて以降、政府は上陸調査などを認めていない。令和2年に石垣市が尖閣諸島の住所地名(字名)を変更し、各島にある旧名の標柱を交換しようとした際にも、政府は上陸を不許可とした。
一方、尖閣諸島に対し根拠のない領有権を主張する中国の挑発はエスカレートするばかりだ。中国公船が周辺の接続水域で確認された日数は昨年、過去最多の336日に上った。
日本政府が中国を刺激することを恐れて調査のための上陸を許可しないのであれば、事なかれ主義も甚だしい。領土を本気で守る気概があるのかどうかも疑わしく、本末転倒もいいところだ。
今回の調査中には4隻の中国公船が領海に侵入したが、海上保安庁の巡視船10隻が徹底的にマークし、調査船に寄せ付けなかった。当然の警備活動とはいえ、任務の遂行を評価したい。
自民党は平成25年の参院選に際し、総合政策集に「尖閣諸島への公務員常駐」と明記した。この方針はどこにいったのか。自然環境調査のための上陸すらさせないというのでは話にならない。
豊かな漁場に恵まれた尖閣諸島には明治期、子供を含めカツオ漁の漁師ら約200人が生活していた。政府は、公務員を常駐させて当時の生活実態や島の現状をしっかり調査すべきである。
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2023年2月2日付産経新聞【主張】を転載しています